“For a man who loves to dress, but knows that
there are more important things than clothes”

「僕は、スーツが嫌いです」。

誤解のない様に、もう少し正確に言うと、「スーツを着て偉ぶっている人が、僕は嫌いです」。

どういう訳か、スーツには不思議な魔力が存在し、着ると背筋が伸び、“大人になった”、“偉くなった”とついつい勘違いをしてしまうものです。

しかし、子供の頃に読んだ物語にもあった様に、魔法が解けてしまったら元の自分に戻ってしまうのです。

残念ながら、僕たちが作るスーツは、偉ぶる為のスーツではないので、袖を通しても魔法の効力はありません。
僕たちの出来ることと言えば、正確に身の丈に合ったスーツを作ることくらいなのです。
もちろん仕立て屋ですから当然ですが・・・。

ありのままの自分を表現するスーツしか作れませんが、お客様と一緒になって悩んで、考えて、勉強していきたいと思っています。

“洋服よりも、本当に大切なことを知っている人たちに・・・”。

そんな想いを胸に、FOUR BUTTONSはあり続けていきたいと思っております。

― 経歴 -

 文化服装学院在学中より、ファッションデザインよりも、洋服の基となる素材、テキスタイルに魅力を感じ、素材の研究、テキスタイルのデザインを専攻する。

 卒業後、原宿の某老舗ユーズドショップで働く。
 1日に約300点以上ものユーズドクローズが入荷するショップで働いたことで、ありとあらゆる国や地域、また、年代も様々なプロダクトを見て触れられたことは、大変貴重な経験だったと、今でも思っています。

 兼ねてから、アイルランド、スコットランドの風土、気候、文化、何よりも毛織物の本場を現地で体験したいという想いから、単身アイルランドの片田舎 ウエストポートに渡り、現地で毛織物やニットなど、手仕事で行われる昔ながらのやり方を勉強する機会を得ました。

 その後、ロンドンに渡り、バックパッカーとして、バスでウエールズ、スコットランドとひたすら毛織物を体験する旅を続け、大変貴重な年代もののウエリッシュキルトや、タータンチェックの資料、ブリティッシュツイードの機屋などを転々と探し巡る旅を続けました。

 現地の方々は、日本からやってきた私に、親切丁寧に数多くのことを見せ、教えてくれました。この時の心温かい応対が、今の私の原点となっているのかもしれません。

 スコットランドのインバネス(グレートブリテン島の北の町)まで来た私は、帰国の途に就こうと考えていましたが、現地の方からシェットランドの話を持ち出され、私が第二の故郷とまで思うことになる、ショットランド島に行く決心をしました。

 シェットランド島は、イギリスの最北の地でもあり、何もかもが今まで見てきたグレートブリテンとは別次元でした。小さな、ほんと小さな島とあって、会う人会う人が初めての日本人として、大変優しく接してくれました。
 夏の短い期間だけでしたが、シェットランドシープの毛を刈る手伝いや、スコッチウィスキーでも知られる、伝統的なピートを作る手伝いなど、大変貴重な経験をさせて頂くことが出来ました。

 手の届くところに全ての自然があり、それと共存して暮らしていく体験が出来たことは、後の人生で大きく影響する考え方を教えてくれた様に思います。

 東京に帰ってきてからは、今まで避けて通ってきた、メンズファッションの全てともいうべき、“スーツスタイル”を一から勉強しようと思い、銀座のテーラー『SARTORIA TAGLIO D’ORO  サルトリア・タリオ・ドーロ』で約8年間、それこそネクタイの締め方からオーダースーツの技術を一から修得することが出来ました。

 在籍中には、店長兼任でブランドのディレクションや企画、バイイング、PRなど幅広く経験することが出来、現在のFOUR BUTTONSの運営で活かすことが出来ています。

 その後、NYのメンズクロージングショップ、『FREEMANS SPORTING CLUB フリーマンズ・スポーティング・クラブ』の海外初出店 FREEMANS SPORTING CLUB‐TOKYOでオープニングスタッフとして、テーラー部門で採用され、約6年間テーラー部門を担当してきました。

 現在もNYのスモールショップであるFREEMANS SPORTING CLUBからは、創設者のターボ・ソマーの理念に強く影響を受けました。 
 本人に会って感じたのは、『コミュニティを重んじ、自分たちの生活圏内で、持続可能な方法であれば、スモールショップでも、その想いは世界中に届けることが出来る。』ということ。

 今まで出会ってきた、ヒトやモノやコト全てが、今の自分を形成していると思っています。
 特に、どんな時も寛容に、見守ってくれていた両親と、いつも背中を押してくれる家族には感謝以外の言葉はありません。

― FOUR BUTTONSとは -

 私が、この業界に入った時(それこそ、スーツのスの字も分からない頃ですが)、スーツの袖に付いている4つの重なった釦に興味というか、疑問を感じたのをよく覚えています。

 他のどの洋服を見返しても、釦が重なっていることはありません。
というより、釦の用途的に考えたら、釦が重なっている理由がないのです。(留めにくいし、外しにくいですからね)

 袖の釦について、ある人は、「その昔、お医者さんが手の消毒の時に、袖をまくり易くする為に釦が付いていたんだよ」と蘊蓄を語り。

 ある人は、「袖口が本切羽になっているのは、あらかじめ袖の長さを測ってから作るオーダーメイドならではのステータスなんだよ」と自慢を話し。

 また、ある人は、「袖の釦を1個か2個、わざと外しておくのが、洒落てていいだろ」と格好つけて言いました。

 たかだか袖の釦に、ずいぶんと想いが詰まっているんだなと、思った記憶があります。

 オーダーメイドとは、一見、その他大勢の人から見たら、どうでもいいことを、“ああだ、こうだ”と自分なりの想いや、思想や、価値観や、こだわりで作り上げていくものだと思っています。

 その“どうでもいいこと”を、分かり易くお店の名前にしたくて、あの時感じた想いを、「FOUR BUTTONS」という名前で表現してみました。

 よく、「スーツのスタイルはブリティッシュですか?イタリアンですか?」 と聞かれますが、私たちはそこにあまり重きを置いていません。
英国や、イタリアなど、ヨーロッパから仕入れるインポートの生地を使い、日本人が採寸し、国内のファクトリー(なかにはアジア各地からの研修で来ている縫製工員もいるかもしれません)で、完成するスーツを、様式がブリティッシュか、イタリアンかなどと論じることに意味を感じないからです。

 それよりも、私たちは、あなた自身に魅力を感じ、興味があります。
 スーツを着る中心にいるあなたこそが、なにものにも替えが利かない、オリジナルのスタイルだと考えています。トレンドや流行のスタイルに左右されるのではなく、自分らしく、個性的で、こだわりのあるスーツスタイルのお手伝いさせて頂きたいと思っております。
 それこそが仕立て屋で誂える本当の価値ではないでしょうか。

 是非、あなたの、“ああだ、こうだ”、“どうでもいいこと”をお聞かせ下さい。

FOUR BUTTONS  垣本 数馬