僕の仕事は、仕立て屋だから、お客様のご要望には出来る限り応えたいと思っている。
特に、「個性的で、こだわりのあるスーツスタイルのお手伝い致します」と謳っている以上、他のお店で断られたり、嫌がられたご注文にも一緒になって悩んで、考えたいを思っている。
うちのお店では、オーダースーツが初めての方や、スーツを着なれていないという方であっても、アドバイスをさせてもらいながら、出来るだけ自分で考えてもらうことを心掛けている。
ただ格好良いスーツを作りたいだけなら、他のお店でも可能だし、そういうお店なら2着目からは手持ちのスマホで完結出来るはずだ。
FOUR BUTTONS(フォーボタンズ)では、一人ひとりのお客様の“あーだ、こーだ”に耳を傾け、一緒に楽しんで注文をしてもらいたいと考えているし、少しづつでもいいから、“自分らしいオーダー”が出来るお客さんになって頂きたいと、仕立て屋のくせに随分と勝手なことを思っているわけなのだ。
今回ご注文頂いたのは、友人であり、僕がウェルドレッサーだと思う数少ない中の一人、 須山 誉志雄くんだ。
毎回、依頼がある度に、「今回はどんなのを作るのだろう」と、仕立て屋のこちらが楽しみにしてしまうくらい、個性的でこだわりがあって面白い。
夏向きのスーツということで、ヴィンテージファブリックからシャリ感のある生地を使い、クラシックなディテールを取り入れたダブルブレステッドでお仕立てさせて頂いた。
ラペルの雰囲気に苦心したのだけれど、かなり存在感ある仕上がりで、お互いに満足いくスーツが出来た。
注文は独特だし、今までにやったことのないようなデザインの場合もあるのだけれど、お互いが満足いくものが出来た時には、思わずニンマリしてしまう。これこそがテーラー冥利に尽きると言えるだろう。
ここからは、ちょっと話は反れてしまうのだけれど、彼がどういう男かってことを話しておきたい。
出来上がりのスーツを着て写真を撮らせて欲しいと言うと、快く承諾してくれた。けれど、撮影当日、相変わらずの雨男の僕は、やはり梅雨入りの初日を連れて来てしまった。
せっかくの撮影に申し訳ないと思い、そのことを彼に詫びると、「雨は、僕にはアクセサリーみたいなものなんで、オッケーです!」と、半分ジョーク、半分本気とも取れる言葉が返ってきた。
こういうウィットのある言葉って、普段から使ってないと、咄嗟に出て来ないし、普段から使っていたからって、普通なら、なんだかイヤミな感じがして好きじゃないんだけど、彼が使うと、なんだか納得してしまう。それに、実際こんなにいい写真が撮れたんだから、見事に雨を味方に付けているってわけだ。
格好良いスーツを作りたいなら、仕立て屋に任せておけばいいと思う、しかし、格好良い人を作ることは、到底仕立て屋には出来ない。
ただ、自分に合うスーツスタイルを知っている人は、ウェルドレッサーで本当に格好良いと思う。
その点で、彼は本当にウェルドレッサーだし、僕が彼のスタイルを好きな理由だ。
吉祥寺の仕立て屋 オーダースーツのFOUR BUTTONS(フォーボタンズ)
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